海洋生物多様性保全関係機関ネットワーク

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海洋教育事例

調査
スナガニ調査

目的

 砂浜に生息するスナガニの生息密度を調べたり、採集して観察することで、砂浜の生物とその生息環境などを理解します。スナガニの生息数は減少しており、地域によっては準絶滅危惧種に指定されるなど、保全が必要です。スナガニ調査を通じて、生物多様性の保全や、絶滅危惧種の保護についても学ぶことができます。

特徴・効果

 多くの子供たちは、海水浴などで砂浜を利用するときに、そこに生息する生物には目を向けていません。砂浜に生息する体表的な生物であるスナガニ調査は、巣穴を数えたり、スナガニの身体を調べたりして、観察力の向上につながります。また、水際から少し離れるので、小学校低学年でも安全に取り組むことができる活動です。

 砂浜は海水浴や釣りなどで多くの人々が海と触れ合う場ですが、海岸浸食や海水浴場の利用などの人為的な改変が行われています。このような環境変化にも気づく機会となります。さらに、日本海ではスナガニは九州から東北(山形)まで広く分布しており、秋田県が分布の境界のようですが、生息状況や分布を調べて記録を続けることで、地球温暖化の影響調査にもなります。

方法

1.調査海岸の選定

 すべての砂浜に生息しているわけではないため、事前に生息状況を確認しておく必要があります。スナガニがよく見つかるのは、細かい砂、波あたりが穏やか、なだらかな傾斜で、ある程度奥行きがあり、人の出入りが少ない砂浜です。まず、砂浜に直径1cm以上の穴がたくさん開いているところが候補地で、巣穴を掘ってスナガニを確認しましょう。

2.調査区画の設定、生息密度の測定

 スナガニの生息密度を測定するため、「幅3m×長さ10m」の区画を設定し、区画内の巣穴数を計測します。長い巻尺や区画を分ける目印(木の棒で可)等が必要です。小さい巣穴は他の生物の巣穴である可能性もあるため、直径が1㎝以上の巣穴を対象にします。調査に参加する人数が多い場合は、区画を複数設置しましょう。巣穴を踏まないように気を付け、数を数えて記録します。

 (あると便利な道具)

  • 巻尺:区画の長さを図るのに必要です。
  • 木の棒:区画の線引きや、コーナーの印として使えます。
  • カウンター:巣穴の数を計測するときに便利です。

 

3.スナガニの掘り取り、観察

 巣穴に乾いた白い砂を流し込み、白い砂をたどって掘り進めてスナガニを掘り出します。数10㎝ほど掘り進めるとスナガニがいます。巣穴が曲がっていたりして、見つからないこともあります。

 掘り出したスナガニを観察します。甲幅を測定し、オスメスの判別、ハサミ脚の左右性(大きい方)の判別を行います。詳しい観察方法はスナガニ観察・調査ハンドブックをご覧ください。

(あると便利な道具)

  • スコップ:巣穴を掘るときに便利です。スコップでスナガニを傷つけないように、途中から手で掘ることが望ましいです。
  • ノギス:スナガニの甲幅を測定するときにあると便利です

 

4.後片付け

 スナガニの観察が終わったら、スナガニを砂浜に戻しましょう。また掘り起こした巣穴は、砂で埋めもどして元に戻しましょう。

応用事例

”南方系スナガニ(地球温暖化影響)調査”

 近年、地球温暖化による海水温上昇に伴って、従来沖縄などの南方に生息しているスナガニの仲間(ツノメガニ、ミナミスナガニ、ナンヨウスナガニなど)の分布が北上しています。日本海でも山陰から北陸にかけて存在が確認されている種もいます。

 各地の砂浜で、これらの種の分布状況を調査することで、地球温暖化に伴う環境変化の影響についても合わせて学習することができます。

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