海洋生物多様性保全関係機関ネットワーク

海洋生物多様性保全関係機関ネットワーク

海洋生物多様性保全関係機関ネットワーク

海洋教育事例

観察
磯観察

目的

 身近な海岸の磯場で、多種多様な海の生き物を探して観察し、名前を調べたりして、海の生き物やすんでいる環境をフィールドで学びます。

特徴・効果

 最近の子供たちは、野外で生き物に触れるような機会は少なく、海岸で実際に生き物を探し、触れて学ぶことできる観察会は非常に貴重な体験となります。また近年では、海岸の環境も大きく変化してきています。磯観察会を通して海の生き物に触れ、海岸の環境を体験する中で、海の生き物や海岸の環境を守っていくことの必要性を感じてもらう機会としても活用できます。

方法

1.場所・時期の選定

 磯観察に適した場所を探しましょう。足場がなだらかで、岩が鋭利でない磯場を選びます。波や海流の穏やかな内湾などが適しています。また、海岸へのアクセスが良く、近くに駐車場やトイレがあると便利です。磯場以外でも、砂浜や漁港などでも実施できるので、海岸の形状によって生息する生物の違いなどを比較すると学習の幅が広がります。

 冬季は波浪の影響を強く受けるため、海が穏やかな春(5月)~秋(10月)に計画すると良いでしょう。雨天や強風、波の高い時は中止します。

 海に入って生き物を採集する場合は、地元の漁業協同組合と事前に相談したほうが良いでしょう。必要に応じて特別採捕許可※の申請が必要です。

※特別採捕許可は漁業協同組合の同意を得たうえで、都道府県に申請します。地元市町村役場で申請方法を確認してください。

2.観察前のレクチャー

 磯場には多くの危険があります。安全第一ですから、観察を開始する前に注意事項を説明します。

(実施するときの注意点)

  • まず、実施範囲と時間、スケジュールを確認しましょう。
  • 足元が不安定で滑ったり、鋭利な岩や貝などで手や足などを切ることがあります。また、生き物の中には、鋭利な棘や毒を持った危険な生物がいます。必ず運動靴などを履きます(マリンシューズが最適。ビーチサンダルなどは不適)。また、軍手やマリングローブがあると安全です。(危険な生物の例:ハオコゼ・ゴンズイ・アカクラゲ・シロガヤ・ウニなど)
  • 多くの磯場には日陰が少ないため、夏場に行うときは、熱中症対策が重要です。各自が帽子をかぶり、十分な飲み物(スポーツ飲料など)を補給して対応しましょう。また、緊急時の薬箱のほかに、クーラーボックスに氷や冷水を用意します。

 

3.観察・採集の実施

 自由に磯の生物の観察、採集を行ってもらいます。その際、主催者は参加者に危険がないか常に注意します。参加者と一緒に観察する指導者と別に、全体の安全を確認する監視者が必要です。主催者側の人数に応じて、参加人数や区画を設定することが重要です。

(あると便利な道具)

  • 箱メガネ:水の中を観察する際にあると便利です(ガラス製は割れると危険なので、透明プラスチック製が良いでしょう)。状況によっては水中眼鏡も有効です。
  • 網:磯にいる小型の魚などを捕まえるときに使います
  • バケツ・水槽・バット:収集した生物を入れておくために使います。
  • ピンセット:岩の間に入り込んだカニなどを捕まえるときにあると便利です。
  • ヘラ:ヒザラガイのように岩にへばりついている貝などをはがすときにあると便利です。
  • エアーポンプ:いわゆる「ブクブク」です。バケツの中で魚が酸欠にならないようにします。
  • 水中カメラ:水深5mほどまでの防水機能が付いたコンパクトカメラがたくさんあります。
  • 偏光メガネ:水面の反射光を抑え、水中が見やすくなります。

 

4.採集生物の説明

 参加者が確認・採集した生物の説明を行います。生物の名前だけでなく、特徴や食べられるかどうかなども合わせて説明すると、参加者も関心を持ちやすいです。水族館や博物館、大学等の協力を得て実施することが望ましいです。

 実施にあたり、透明ケースがあると魚を観察したり、撮影するのに便利です。写真は重要な記録になりますし、参加者が説明を記録する観察ノートやメモ帳を用意しておくと、後で取りまとめるときに役立ちます。

 時間に余裕があるようであれば、図鑑などを使って、参加者自身にまず調べてもらうのも有効ですが、時間がかかると生物も人も疲れてしまいますので状況を見て行います。

(参考となる図鑑など)

  • 写真でわかる磯の生き物図鑑:今原幸光 編著 トンボ出版
  • 海の生物450種 磯の生き物図鑑:小林安雅 監修:主婦の友社

 

5.片付け

 全ての観察が終わったら、採集した生物を海に戻して終了です。貝殻などの遺物は、持ち帰っても良いでしょう。ごみなどはきちんと回収して持ち帰ります。

 後日、観察生物をリスト化しておくと、重要な調査記録になります。

応用事例

 ”パワー磯観察”

 ウェットスーツや水中メガネ・シュノーケルなどを着用して、海中で磯観察します。広い範囲で、より多くの生物を観察でき、楽しさは倍増します。

ビーチコーミング